ご家族が亡くなられた後の相続手続きは、思っている以上に多くの確認事項があります。

「何から始めればよいのか」
「遺言書がある場合とない場合で何が違うのか」
「銀行、不動産、自動車、相続税など、どこまで手続きが必要なのか」
「行政書士には何を依頼できるのか」

このような疑問を持たれる方は少なくありません。

相続手続きは、戸籍の収集、相続人の確認、財産の整理、遺産分割協議書の作成、預貯金や自動車の名義変更など、順番に進めることで全体像が見えやすくなります。

この記事では、相続が発生したときに必要となる手続きの流れと、行政書士がサポートできる内容を、委任者の方の視点からわかりやすく整理します。


1. 相続が発生したら、まず確認すべきこと

相続は、亡くなられた方の財産や権利義務を、相続人が引き継ぐ手続きです。

最初に確認すべきことは、大きく分けて次の4つです。

1つ目は、相続人が誰かを確認することです。配偶者、子、親、兄弟姉妹など、民法上の相続人を戸籍で確認します。普段の家族関係では分かっているつもりでも、相続手続きでは出生から死亡までの戸籍など、書面による確認が必要になります。

2つ目は、遺言書の有無です。遺言書がある場合は、その内容に沿って手続きを進めるのが原則です。自宅で自筆証書遺言が見つかった場合などは、勝手に開封せず、家庭裁判所の検認が必要になる場合があります。なお、公正証書遺言や法務局で保管されている自筆証書遺言については、検認が不要とされています。

3つ目は、相続財産の内容です。預貯金、不動産、株式、自動車、保険、借金、未払金など、プラスの財産だけでなくマイナスの財産も確認します。

4つ目は、期限のある手続きです。たとえば、相続放棄を検討する場合は、原則として相続の開始を知った時から3か月以内に判断する必要があります。相続税の申告が必要な場合は、原則として死亡を知った日の翌日から10か月以内に申告・納税を行います。


2. 遺言書がある場合とない場合で、手続きは変わります

相続手続きでは、まず遺言書があるかどうかが重要です。

遺言書がある場合は、原則としてその内容に従って財産を引き継ぎます。公正証書遺言であれば、比較的スムーズに手続きを進めやすい一方、自筆証書遺言の場合は、形式の不備や内容の解釈が問題になることもあります。

一方、遺言書がない場合は、相続人全員で話し合い、誰がどの財産を取得するかを決める必要があります。これを遺産分割協議といいます。

相続人が1人だけであれば、遺産分割協議は不要です。しかし、相続人が複数いる場合は、全員の合意が必要になります。たとえ財産の大部分を一人が取得する場合でも、他の相続人の同意を確認し、後日のトラブルを防ぐために遺産分割協議書を作成することが重要です。


3. 相続人調査と財産調査が、すべての出発点です

相続手続きで最初に行う実務は、相続人調査と財産調査です。

相続人調査では、亡くなられた方の戸籍を出生から死亡までたどり、法定相続人を確定します。相続人の範囲を誤ると、遺産分割協議書が無効になったり、銀行や法務局で手続きが止まったりすることがあります。

財産調査では、預貯金、不動産、有価証券、自動車、生命保険、借入金、未払金などを整理します。これを一覧にしたものが財産目録です。

財産目録を作ることで、相続人同士の話し合いがしやすくなり、相続税がかかる可能性があるかどうかの判断にも役立ちます。相続税は、正味の遺産額が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の基礎控除額を超える場合に問題となります。


4. 遺産分割協議書は、相続手続きの中心となる書類です

遺言書がない場合、相続人全員で財産の分け方を決め、その内容を遺産分割協議書にまとめます。

遺産分割協議書は、預貯金の解約・払戻し、不動産の相続登記、自動車の名義変更など、さまざまな手続きで必要になります。

単に「長男がすべて相続する」「預金は均等に分ける」といった簡単な記載では、金融機関や法務局で受け付けてもらえないことがあります。財産の特定、相続人全員の署名押印、印鑑証明書の添付など、実務上の要件を押さえて作成することが大切です。

行政書士は、遺産分割協議書など、権利義務に関する書類の作成を業務として行うことができます。


5. 預貯金・不動産・自動車など、財産ごとに手続きが異なります

相続財産は、種類ごとに手続き先や必要書類が異なります。

預貯金については、金融機関に相続届、戸籍、遺産分割協議書、印鑑証明書などを提出し、口座の解約や払戻しを行います。銀行によって書式や必要書類が異なるため、事前確認が必要です。

不動産については、相続登記が必要です。相続登記は2024年4月1日から義務化されており、不動産を相続したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。登記申請そのものは司法書士の業務となるため、行政書士は戸籍収集、相続関係説明図、遺産分割協議書などの準備を行い、必要に応じて司法書士と連携します。

自動車を相続した場合は、名義変更、売却、廃車などの手続きが必要になることがあります。車検証上の所有者が誰になっているか、ローンやリースが残っていないかなども確認します。


6. 行政書士に依頼できること、他士業と連携すべきこと

行政書士が相続手続きでサポートできる主な業務は、次のようなものです。

相続人調査のための戸籍収集、相続関係説明図の作成、財産目録の作成、遺産分割協議書の作成、預貯金や自動車の相続手続き、公正証書遺言作成の準備支援などです。

一方で、相続人同士で争いがある場合の代理交渉や訴訟は弁護士、不動産の相続登記申請は司法書士、相続税の申告は税理士の業務となります。

そのため、相続手続きでは「誰に相談すればよいか」を見極めることも重要です。行政書士は、相続手続き全体の入口として状況を整理し、必要に応じて弁護士、司法書士、税理士などの専門家と連携しながら進める役割を担います。


7. 生前対策としての遺言書作成も重要です

相続は、亡くなった後に始まる手続きだけではありません。生前に準備しておくことで、ご家族の負担を大きく減らすことができます。

特に、子どものいないご夫婦、おひとりさま、再婚家庭、不動産を複数所有している方、相続人同士の関係に不安がある方は、遺言書の作成を検討する価値があります。

遺言書には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。実務上は、安全性や確実性の面から公正証書遺言が選ばれることも多く、自筆証書遺言については法務局の保管制度を利用する方法もあります。

遺言書は、財産を渡す相手を決めるだけでなく、残された家族が迷わず手続きを進めるための大切な道しるべになります。


まとめ|相続手続きは、全体像を把握して早めに進めることが大切です

相続手続きは、戸籍、遺言書、財産、遺産分割、名義変更、税金など、多くの要素が関係します。

一つひとつの手続きは複雑に見えますが、全体の流れを整理すれば、何をいつまでに進めるべきかが見えてきます。

行政書士は、相続人調査、財産目録、遺産分割協議書、預貯金や自動車の手続き、遺言書作成支援などを通じて、相続手続きの実務面をサポートします。

相続が発生した方だけでなく、将来の相続に備えたい方も、早めに準備することで、ご家族の負担や不安を軽くすることができます。

横浜・神奈川・東京で相続手続きについてお困りの方は、まずは現在の状況を整理するところからご相談ください。


今後掲載予定の相続コラム

以下のテーマについて、今後さらに詳しく解説していく予定です。

  • 相続が発生したら最初にやるべきこと|手続きの全体像を解説
  • 相続人調査とは?戸籍収集の方法と注意点
  • 相続関係説明図とは?作成するメリットと使い道
  • 財産目録とは?預貯金・不動産・株式・借金の整理方法
  • 遺言書がある場合の相続手続きの進め方
  • 遺言書がない場合の相続手続きと遺産分割協議
  • 相続人が1人の場合と複数いる場合の違い
  • 遺産分割協議書とは?必要になる場面と作成時の注意点
  • 自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違い
  • 公正証書遺言を作る流れ|必要書類・費用・期間の目安
  • 自筆証書遺言を作るときの注意点と法務局保管制度
  • 預貯金の相続手続き|銀行口座の解約・払戻しの流れ
  • 不動産を相続した場合の手続き|相続登記と司法書士との連携
  • 自動車を相続した場合の名義変更・売却・廃車手続き
  • 相続税がかかる場合とは?行政書士と税理士の役割分担
  • 相続で揉めそうな場合は誰に相談すべきか|弁護士・司法書士・行政書士の違い
  • 行政書士に依頼できる相続手続きと依頼できない業務
  • 生前対策としての遺言書作成|家族に負担を残さないために
  • おひとりさま・子どものいない夫婦の相続準備
  • 横浜・神奈川で相続手続きを相談する際のポイント