10-4. おひとりさまの相続準備|遺言書と財産整理の重要性

配偶者や子どもがいない方、親族と疎遠な方、身近に相続手続きを頼める人がいない方にとって、相続準備は重要な課題です。

いわゆる「おひとりさま」の相続では、亡くなった後に誰が手続きを進めるのか、財産を誰に残すのか、家の整理や預貯金の手続きをどうするのかを考えておく必要があります。

この記事では、おひとりさまの相続準備として、遺言書、財産整理、専門家への相談について解説します。


1. おひとりさまでも相続人がいる場合があります

配偶者や子どもがいない場合でも、必ず相続人がいないとは限りません。

国税庁は、配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は子、直系尊属、兄弟姉妹の順で相続人になると説明しています。子どもや父母がいない場合には、兄弟姉妹が相続人になることがあり、兄弟姉妹が先に亡くなっている場合には甥・姪が相続人になることがあります。
(出典:「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」国税庁

つまり、長年交流がない兄弟姉妹や甥・姪が相続人になることがあります。

相続人が誰になるかを、戸籍で確認しておくことが大切です。


2. 遺言書がないと希望どおりに財産を残せないことがあります

おひとりさまが、特定の親族、友人、団体、施設、支援してくれた人などに財産を残したい場合には、遺言書が重要になります。

遺言書がない場合、原則として法律上の相続人が財産を取得します。

相続人ではない人に財産を渡したい場合、遺言書で遺贈する内容を定めておく必要があります。

たとえば、次のような希望がある場合です。

  • 甥や姪の一人に財産を多く残したい
  • 長年世話になった人に財産を渡したい
  • お世話になった施設や団体へ寄付したい
  • 墓じまいや供養の費用を確保したい
  • ペットの世話を頼む人に費用を残したい

このような希望は、口頭で伝えるだけでは実現が難しいことがあります。


3. 公正証書遺言を検討する

おひとりさまの場合、遺言書は公正証書遺言で作成することを検討しやすいです。

公正証書遺言は、公証人が作成し、公証役場で原本が保管されます。

自筆証書遺言に比べて形式不備や紛失のリスクを抑えやすく、相続開始後の手続きでも利用しやすい方法です。

また、公正証書遺言は家庭裁判所の検認が不要です。裁判所も、公正証書遺言については検認の必要がないと案内しています。
(出典:「遺言書の検認」裁判所

相続人がいない可能性がある場合や、相続人以外に財産を渡したい場合には、公正証書遺言を検討するとよいでしょう。


4. 財産目録を作成しておく

おひとりさまの相続準備では、財産目録の作成も重要です。

財産目録には、次のような情報を整理します。

  • 預貯金の金融機関名・支店名
  • 証券会社の口座
  • 不動産の所在地
  • 生命保険
  • 自動車
  • 年金関係
  • 借入金やローン
  • クレジットカード
  • サブスクリプション契約
  • 貴重品や重要書類の保管場所

本人しか知らない口座や契約があると、亡くなった後に手続きが非常に大変になります。

通帳、権利証、保険証券、契約書、パスワードの管理方法なども整理しておきましょう。


5. 死後事務についても考える

おひとりさまの場合、相続財産の分け方だけでなく、亡くなった後の事務手続きも問題になります。

たとえば、次のような手続きです。

  • 葬儀や火葬
  • 納骨や供養
  • 病院や施設費用の精算
  • 住居の明渡し
  • 家財の処分
  • 公共料金や携帯電話の解約
  • ペットの引き取り
  • 行政手続き

遺言書は財産の承継を中心に定めるものですが、死後事務については別途、死後事務委任契約などを検討することがあります。

誰に何を頼むのかを、生前に整理しておくことが大切です。


6. 任意後見や見守り契約も検討する

将来、判断能力が低下した場合に備えて、任意後見契約や見守り契約を検討することもあります。

成年後見制度について、裁判所は、認知症、知的障害、精神障害などによって物事を判断する能力が十分ではない方について、本人の権利を守る人を選ぶことで、本人を法律的に支援する制度と説明しています。
(出典:「成年後見制度(後見・保佐・補助)の概要を知りたい方へ」裁判所

おひとりさまの場合、相続だけでなく、生前の生活支援、財産管理、医療・介護の手続きまで含めて考える必要があります。

相続準備とあわせて、将来の生活支援についても相談しておくと安心です。


7. 行政書士に相談できること

行政書士は、おひとりさまの相続準備について、財産目録の作成、相続人調査、遺言書文案の整理、公正証書遺言作成の準備支援、死後事務委任契約に関する書類作成などをサポートできます。

また、必要に応じて、司法書士、税理士、弁護士、社会福祉関係者などと連携しながら進めることがあります。

おひとりさまの相続準備は、早めに始めるほど選択肢が広がります。


まとめ|おひとりさまの相続準備は早めの整理が大切です

おひとりさまの相続では、誰が相続人になるか、誰に財産を残すか、亡くなった後の手続きを誰に頼むかを考える必要があります。

重要なポイントは次のとおりです。

  1. 配偶者や子どもがいなくても相続人がいる場合がある
  2. 相続人ではない人に財産を残すには遺言書が重要である
  3. 公正証書遺言を検討する価値がある
  4. 財産目録を作成して財産を見える化する
  5. 葬儀・住居・契約解約などの死後事務も考える
  6. 任意後見や見守り契約も検討する

おひとりさまの相続準備は、財産だけでなく、生活と死後の手続き全体を見据えて進めることが大切です。


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