10-7. 相続人が海外に住んでいる場合の手続き
相続人の中に海外在住者がいる場合、相続手続きは通常より時間がかかることがあります。
遺産分割協議書への署名、印鑑証明書の代わりとなる書類、住所証明、書類の郵送、時差による連絡など、確認すべき点が多くなるためです。
この記事では、相続人が海外に住んでいる場合の手続きの進め方と注意点について解説します。
1. 海外在住でも相続人であることに変わりはありません
相続人が海外に住んでいても、法律上の相続人であれば、相続手続きに関与する必要があります。
海外に住んでいるからといって、その人を除いて遺産分割協議を進めることはできません。
遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要です。
まずは戸籍を確認し、海外在住者を含めて相続人全員を正確に把握することが大切です。
2. 印鑑証明書の代わりに署名証明が必要になることがある
日本国内に住民登録がある相続人は、通常、遺産分割協議書に実印を押し、印鑑証明書を添付します。
しかし、海外在住で日本に住民登録がない場合、印鑑証明書を取得できないことがあります。
外務省は、署名証明について、日本に住民登録をしていない海外在留者に対し、日本の印鑑証明に代わるものとして日本での手続のために発給される証明であり、申請者の署名や拇印が領事の面前でなされたことを証明するものと説明しています。
(出典:「在外公館における証明」外務省)
相続手続きでは、遺産分割協議書への署名について、この署名証明を利用することがあります。
3. 署名証明には形式がある
外務省は、署名証明の方法には2種類があると説明しています。
一つは、在外公館が発行する証明書と、申請者が領事の面前で署名した私文書を綴り合わせて割り印を行う形式です。
もう一つは、申請者の署名を単独で証明する形式です。
どちらの形式を利用するかは提出先の意向によるため、あらかじめ提出先に確認する必要があります。
(出典:「在外公館における証明」外務省)
不動産登記、金融機関手続き、証券会社手続きなどで求められる形式が異なる場合があります。
署名証明を取得する前に、提出先や司法書士、行政書士に確認しておくと安心です。
4. 在留証明が必要になることがある
海外在住者については、住所を証明する資料として在留証明が必要になることがあります。
外務省は、在留証明について、外国に住む日本人がどこに住所を有しているかを、その地を管轄する在外公館が証明するものと説明しています。不動産登記などで、日本国内の提出先から外国における住所証明の提出を求められる場合に発給される証明です。
(出典:「在外公館における証明」外務省)
不動産を取得する相続人が海外に住んでいる場合や、法定相続情報一覧図に住所を記載する場合などに、在留証明が必要になることがあります。
5. 書類のやり取りに時間がかかる
海外在住の相続人がいる場合、書類のやり取りに時間がかかります。
特に注意したい点は次のとおりです。
- 国際郵便の日数
- 署名証明や在留証明の取得予約
- 在外公館の開館日
- 書類の形式の確認
- 日本語書類の説明
- 時差による連絡の遅れ
- 紛失防止のための追跡可能な郵送方法
- 書類に不備があった場合の再取得
署名証明は、原則として領事の面前で署名する必要があります。
外務省も、署名は領事の面前で行う必要があり、事前に署名をせずに書類を持参するよう案内しています。
(出典:「在外公館における証明」外務省)
先に署名してしまうと、やり直しになる可能性があります。
6. 外国籍の相続人がいる場合
相続人が外国籍の場合、日本の戸籍や在外公館の署名証明だけでは対応できないことがあります。
国籍や居住国によって、出生証明書、婚姻証明書、住所証明、宣誓供述書、公証人の認証、アポスティーユ、翻訳文などが必要になる場合があります。
必要書類は、手続き先、国籍、居住国、相続財産の内容によって変わります。
外国籍の相続人がいる場合には、早めに専門家や提出先に確認することをおすすめします。
7. 海外在住者がいる場合の遺産分割協議書
海外在住の相続人がいる場合でも、遺産分割協議書の内容は相続人全員で合意する必要があります。
作成時には、次の点に注意しましょう。
- 相続人全員に内容を説明する
- 海外在住者が理解できるように財産内容を整理する
- 署名証明の形式を事前に確認する
- 在留証明が必要か確認する
- 郵送前にPDFなどで内容を確認してもらう
- 署名前の文書を在外公館に持参してもらう
- 返送は追跡可能な方法にする
不動産登記がある場合には、司法書士に事前確認してから署名証明を取得することが大切です。
8. 行政書士に相談できること
行政書士は、海外在住の相続人がいる場合の戸籍収集、相続人調査、財産目録、遺産分割協議書の作成、必要書類の整理などをサポートできます。
また、署名証明や在留証明が必要になる場合の段取りを整理し、司法書士や金融機関と連携しながら進めることがあります。
ただし、海外在住の相続人との間で争いがある場合や、法的交渉が必要な場合には、弁護士への相談が必要です。
まとめ|海外在住の相続人がいる場合は早めの書類確認が重要です
相続人が海外に住んでいる場合でも、相続人であることに変わりはありません。
重要なポイントは次のとおりです。
- 海外在住者を除いて遺産分割協議はできない
- 印鑑証明書の代わりに署名証明が必要になることがある
- 住所証明として在留証明が必要になることがある
- 署名証明の形式は提出先に確認する
- 書類の郵送や在外公館での手続きに時間がかかる
- 外国籍の相続人がいる場合は必要書類がさらに変わることがある
海外在住の相続人がいる場合には、通常より早めに必要書類を確認し、余裕を持って手続きを進めましょう。
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出典・参考情報
- 「在外公館における証明」外務省
海外在住者の署名証明、在留証明、証明の形式、申請時の注意点などが案内されています。 - 「民法」e-Gov法令検索
相続人、遺産分割、相続手続きの基本となる民法上の規定を確認できます。 - 「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」国税庁
法定相続人の範囲、相続順位、代襲相続について案内されています。
