11-2. 公正証書遺言を作成した方がよいケース
遺言書にはいくつかの種類がありますが、安全性や確実性を重視する場合には、公正証書遺言が有力な選択肢になります。
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。
自筆証書遺言に比べると費用と準備は必要ですが、形式不備や紛失のリスクを抑えやすく、相続開始後の手続きも進めやすいという特徴があります。
この記事では、公正証書遺言を作成した方がよいケース、作成時の注意点、行政書士に相談できる内容について解説します。
1. 公正証書遺言とは
公正証書遺言とは、公証人が遺言者の意思を確認し、公正証書として作成する遺言書です。
民法では、公正証書遺言について、証人2人以上の立会い、遺言者による遺言の趣旨の口授、公証人による筆記、読み聞かせ、署名押印などの方式が定められています。
(出典:「民法」e-Gov法令検索)
公正証書遺言は、公証人が関与して作成するため、形式不備のリスクを抑えやすい遺言書です。
また、原本は公証役場に保管されるため、紛失や改ざんの心配も少なくなります。
2. 公正証書遺言が向いているケース
次のような場合には、公正証書遺言を検討する価値があります。
- 不動産がある
- 子どものいない夫婦である
- おひとりさまである
- 再婚家庭である
- 前婚の子がいる
- 相続人同士の関係に不安がある
- 相続人以外の人に財産を渡したい
- 事業や会社の承継を考えている
- 高齢で今後の判断能力に不安がある
- 自筆証書遺言の形式不備が心配である
- 遺言書の紛失や発見されないリスクを避けたい
特に、相続人同士の関係が複雑な場合や、財産に不動産が含まれる場合には、相続開始後に使いやすい遺言書を作成しておくことが重要です。
3. 子どものいない夫婦の場合
子どものいない夫婦では、配偶者だけが相続人になるとは限りません。
亡くなられた方の父母、兄弟姉妹、甥・姪が相続人になることがあります。
そのため、残された配偶者に自宅や預貯金を確実に残したい場合には、公正証書遺言を作成しておくことが有効です。
兄弟姉妹には遺留分がないため、兄弟姉妹が相続人になる可能性がある場合には、遺言書によって配偶者への財産承継を明確にしやすくなります。
ただし、父母など直系尊属が相続人になる場合には遺留分が問題になることがあります。
家族関係に応じて、専門家に確認しながら進めることが大切です。
4. 再婚家庭の場合
再婚家庭では、現在の配偶者、前婚の子、再婚後の子、再婚相手の子など、関係者が複雑になることがあります。
前婚の子も、法律上の子であれば相続人になります。
一方、再婚相手の連れ子は、養子縁組をしていなければ当然には相続人になりません。
このような場合、遺言書がないと、相続開始後に遺産分割協議が難しくなることがあります。
公正証書遺言で財産の承継先を明確にしておくことで、残された家族の負担を減らしやすくなります。
5. 相続人以外に財産を渡したい場合
友人、内縁の配偶者、長年世話になった人、団体、施設など、法律上の相続人ではない人に財産を渡したい場合には、遺言書が重要です。
遺言書がない場合、相続人以外の人は原則として相続財産を取得できません。
公正証書遺言で遺贈の内容を明確にしておけば、相続開始後の手続きを進めやすくなります。
ただし、遺留分を侵害する内容になっている場合には、相続人との間で問題が生じることがあります。
財産の渡し方は慎重に検討する必要があります。
6. 公正証書遺言の費用と検認
公正証書遺言を作成するには、公証役場の手数料がかかります。
日本公証人連合会は、公正証書遺言の作成手数料について、目的の価額に応じた手数料表を公表しています。たとえば、500万円を超え1,000万円以下の場合は20,000円、3,000万円を超え5,000万円以下の場合は33,000円などとされています。
(出典:「Q7.公正証書遺言の作成手数料は、どれくらいですか?」日本公証人連合会)
また、公正証書遺言は、相続開始後に家庭裁判所の検認が不要です。
裁判所も、公正証書による遺言は検認の必要がないと案内しています。
(出典:「遺言書の検認」裁判所)
費用はかかりますが、確実性を重視する場合には、公正証書遺言を検討する価値があります。
7. 行政書士に相談できること
行政書士は、公正証書遺言の作成に向けて、相続人関係の確認、財産目録の作成、遺言書文案の整理、必要書類の収集、公証役場との事前調整などをサポートできます。
公正証書遺言は、公証役場で作成しますが、その前段階で財産と相続人関係を整理しておくことが重要です。
不動産、相続税、遺留分、家族関係の複雑さが関係する場合には、司法書士、税理士、弁護士と連携して進めることもあります。
まとめ|確実性を重視するなら公正証書遺言を検討しましょう
公正証書遺言は、形式面や保管面で安全性の高い遺言書です。
重要なポイントは次のとおりです。
- 公証人が関与して作成する
- 原本が公証役場に保管される
- 家庭裁判所の検認が不要である
- 不動産がある場合や家族関係が複雑な場合に向いている
- 相続人以外に財産を渡したい場合にも有効である
- 作成前に財産目録と相続人関係を整理することが大切である
相続開始後に家族が困らないようにするためには、内容が明確で、実務で使いやすい遺言書を作成しておくことが重要です。
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出典・参考情報
- 「民法」e-Gov法令検索
公正証書遺言、自筆証書遺言、秘密証書遺言など、遺言の方式について定められています。 - 「Q7.公正証書遺言の作成手数料は、どれくらいですか?」日本公証人連合会
公正証書遺言の作成手数料について案内されています。 - 「遺言書の検認」裁判所
公正証書遺言は家庭裁判所の検認が不要であることが案内されています。

