9-5. 相続手続きで弁護士に相談すべきケース

相続手続きでは、行政書士、司法書士、税理士など、複数の専門家が関係することがあります。

その中でも、相続人同士で争いがある場合や、交渉・調停・訴訟が必要になる場合には、弁護士への相談が必要です。

行政書士は、争いのない相続手続きにおける書類作成を支援できますが、相続人間の交渉代理を行うことはできません。

この記事では、相続手続きで弁護士に相談すべきケースについて解説します。


1. 遺産分割協議がまとまらない場合

相続人全員で財産の分け方について話し合っても、意見がまとまらないことがあります。

たとえば、次のようなケースです。

  • 自宅不動産を誰が取得するかで対立している
  • 預貯金の分け方で意見が合わない
  • 一人が不動産を取得する代わりに支払う代償金で揉めている
  • 相続人の一人が協議に応じない
  • 遺産分割協議書への押印を拒否している

裁判所は、遺産分割について相続人間で話合いがつかない場合、家庭裁判所の遺産分割調停または審判を利用できると案内しています。
(出典:「遺産分割調停」裁判所

調停や審判を見据える場合には、弁護士に相談することが重要です。


2. 預金の使い込みが疑われる場合

相続では、亡くなられた方の預金が生前または死亡後に引き出されていたことが問題になることがあります。

たとえば、次のような場合です。

  • 亡くなる直前に多額の出金がある
  • 特定の相続人が通帳やカードを管理していた
  • 死亡後に預金が引き出されている
  • 使途の説明がない
  • 介護費用や生活費として使ったという説明に疑問がある

このような場合、事実関係の確認、資料の開示請求、交渉、場合によっては訴訟対応が必要になることがあります。

行政書士が相続人の一方の代理人として追及や交渉をすることはできません。


3. 遺留分の請求がある場合

遺言書によって特定の相続人に財産が集中している場合、他の相続人から遺留分侵害額請求がされることがあります。

また、自分が遺留分を請求したい側になることもあります。

遺留分は、一定の相続人に認められた最低限の取り分です。

遺留分侵害額請求は金銭請求であり、相続人間の交渉や法的判断が関係します。

請求する側、請求された側のいずれであっても、弁護士に相談することをおすすめします。


4. 遺言書の有効性を争う場合

遺言書が見つかった場合でも、その内容や作成時の状況をめぐって争いになることがあります。

たとえば、次のようなケースです。

  • 本人が書いたものか疑問がある
  • 作成時に認知症だった可能性がある
  • 日付や署名押印に不備がある
  • 内容が不自然である
  • 特定の相続人が関与して作成された疑いがある
  • 遺言書が複数見つかった

遺言書の有効性を争う場合には、法的主張や証拠の整理が必要になります。

このような場合は、弁護士に相談すべきです。


5. 特別受益や寄与分で揉めている場合

相続人の中に、生前贈与を多く受けた人がいる場合や、亡くなられた方の介護や事業に大きく貢献した人がいる場合、特別受益や寄与分が問題になることがあります。

たとえば、次のような主張です。

  • 兄は生前に住宅資金を援助してもらっていた
  • 長女が長年介護をしていた
  • 事業を手伝って財産形成に貢献した
  • 一部の相続人だけが多額の贈与を受けていた

これらは、相続人間で意見が対立しやすいテーマです。

話し合いでまとまらない場合には、弁護士に相談することが必要です。


6. 弁護士が対応できること

弁護士は、相続に関する法律問題について、依頼者の代理人として対応できます。

弁護士法は、弁護士が訴訟事件、非訟事件、その他一般の法律事務を行うことを職務とすると定めています。
(出典:「弁護士法」e-Gov法令検索

相続では、主に次のような業務を依頼できます。

  • 相続人間の交渉代理
  • 遺産分割協議の代理
  • 遺産分割調停・審判への対応
  • 遺留分侵害額請求
  • 預金使い込み問題への対応
  • 遺言無効確認の対応
  • 相続放棄や限定承認に関する相談
  • 相続トラブル全般の法的助言

相続人間に争いがある場合には、早めに弁護士へ相談することで、対応方針を整理しやすくなります。


まとめ|相続で争いがある場合は弁護士に相談しましょう

相続手続きで弁護士に相談すべきなのは、相続人間で争いがある場合や、法的な交渉・調停・訴訟が必要になる場合です。

重要なポイントは次のとおりです。

  1. 遺産分割協議がまとまらない場合は弁護士に相談する
  2. 預金の使い込みが疑われる場合は弁護士が必要になることがある
  3. 遺留分の請求は法的判断が必要である
  4. 遺言書の有効性を争う場合は弁護士に相談する
  5. 特別受益や寄与分は争いになりやすい
  6. 行政書士は争いの代理交渉を行うことはできない

相続で揉めそうな場合には、無理に話し合いを進めず、早めに弁護士へ相談することが大切です。


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