10-1. 相続人が1人の場合と複数いる場合の違い
相続手続きは、相続人が1人だけの場合と、複数いる場合とで進め方が大きく変わります。
相続人が1人であれば、遺産分割協議は不要です。
一方、相続人が複数いる場合には、原則として相続人全員で財産の分け方を話し合う必要があります。
この記事では、相続人が1人の場合と複数いる場合の違い、必要になる書類、手続き上の注意点について解説します。
1. まず相続人を戸籍で確認する
相続人が1人か複数かを判断するには、戸籍による確認が必要です。
家族の記憶では「相続人は1人だけ」と思っていても、戸籍を確認すると、前婚の子、養子、認知した子、代襲相続人などが判明することがあります。
国税庁は、法定相続人の範囲について、配偶者は常に相続人となり、配偶者以外の人は子、直系尊属、兄弟姉妹の順序で相続人になると説明しています。兄弟姉妹がすでに亡くなっている場合には、その子である甥・姪が相続人になることがあります。
(出典:「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」国税庁)
そのため、相続手続きでは、まず戸籍を集めて相続人を確定することが重要です。
2. 相続人が1人の場合
相続人が1人だけの場合、その人が相続財産を取得します。
この場合、相続人同士で財産の分け方を話し合う必要がないため、遺産分割協議書は原則として不要です。
ただし、手続きが何もしなくてよいという意味ではありません。
次のような手続きは必要になります。
- 戸籍を集めて相続人が1人であることを証明する
- 預貯金の解約・払戻しを行う
- 不動産があれば相続登記を行う
- 自動車があれば名義変更や売却・廃車を行う
- 株式や投資信託があれば証券会社で手続きする
- 相続税がかかる可能性があれば税理士に確認する
相続人が1人の場合でも、金融機関や法務局に対して「他に相続人がいないこと」を戸籍で示す必要があります。
3. 相続人が複数いる場合
相続人が複数いる場合には、誰がどの財産を取得するかを決める必要があります。
遺言書がない場合には、相続人全員で遺産分割協議を行います。民法でも、共同相続人は、一定の場合を除き、いつでも協議で遺産の分割をすることができると定められています。
(出典:「民法」e-Gov法令検索)
遺産分割協議では、たとえば次のような内容を決めます。
- 預貯金を誰が取得するか
- 不動産を誰の名義にするか
- 自動車を誰が引き継ぐか
- 株式や投資信託をどう分けるか
- 借金や未払金をどう整理するか
- 一人が不動産を取得し、他の相続人に代償金を支払うか
遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要です。
一部の相続人を除いて作成した遺産分割協議書では、銀行や法務局で手続きが進まないことがあります。
4. 相続人が複数いる場合に必要になりやすい書類
相続人が複数いる場合には、次のような書類が必要になることが多くあります。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍
- 相続人全員の戸籍
- 相続関係説明図
- 法定相続情報一覧図
- 財産目録
- 遺産分割協議書
- 相続人全員の印鑑証明書
- 相続人全員の実印
- 金融機関所定の相続届
特に遺産分割協議書には、相続人全員が実印で押印し、印鑑証明書を添付することが一般的です。
相続人が遠方にいる場合や、海外に住んでいる場合には、書類のやり取りに時間がかかります。
5. 相続人が1人でも注意すべきこと
相続人が1人の場合でも、次の点には注意が必要です。
- 借金や未払金も相続する可能性がある
- 相続放棄を検討する場合は期限がある
- 不動産の相続登記が必要になる
- 相続税がかかる可能性がある
- 後から別の相続人が判明しないよう戸籍確認が必要
不動産を相続した場合、相続登記は2024年4月1日から義務化されており、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。
(出典:「相続登記の申請義務化に関するQ&A」法務省)
相続人が1人でも、財産と債務の確認、名義変更、税務確認は必要です。
6. 相続人が複数いる場合に注意すべきこと
相続人が複数いる場合は、次の点に注意しましょう。
- 相続人全員を正確に確認する
- 財産の全体像を整理する
- 口頭の合意だけで済ませない
- 遺産分割協議書を作成する
- 預金の引出しや財産処分は記録を残す
- 意見が合わない場合は早めに専門家へ相談する
相続人間で話し合いがまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停や審判を利用することがあります。裁判所も、遺産の分割について相続人間で話合いがつかない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停または審判を利用できると案内しています。
(出典:「遺産分割調停」裁判所)
7. 行政書士に相談できること
行政書士は、相続人が1人の場合でも複数いる場合でも、戸籍収集、相続人調査、相続関係説明図、財産目録、遺産分割協議書の作成などをサポートできます。
相続人が1人の場合は、相続人であることの証明と財産手続きの整理が中心になります。
相続人が複数いる場合は、遺産分割協議書の作成や、相続人全員の書類をそろえる段取りが重要になります。
ただし、相続人間で争いがある場合には、弁護士への相談が必要です。
まとめ|相続人の人数によって必要な手続きは変わります
相続人が1人の場合と複数いる場合では、相続手続きの進め方が異なります。
重要なポイントは次のとおりです。
- 相続人の人数は戸籍で確認する
- 相続人が1人なら遺産分割協議は原則不要である
- 相続人が複数なら相続人全員の合意が必要である
- 複数相続では遺産分割協議書が重要になる
- 相続人が1人でも財産・債務・税金の確認は必要である
- 争いがある場合は弁護士に相談する
相続手続きを始める際は、まず相続人が誰なのかを正確に確認し、その人数に応じた手続きを進めましょう。
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出典・参考情報
- 「No.4132 相続人の範囲と法定相続分」国税庁
法定相続人の範囲、相続順位、法定相続分について案内されています。 - 「民法」e-Gov法令検索
相続、遺産分割、相続人の範囲などに関する基本規定を確認できます。 - 「相続登記の申請義務化に関するQ&A」法務省
相続登記の義務化、3年以内の申請義務などが案内されています。 - 「遺産分割調停」裁判所
遺産分割について話合いがつかない場合の家庭裁判所の調停・審判手続が案内されています。
