5-4. 自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違い

遺言書には、いくつかの種類があります。

代表的なものが、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言です。

それぞれ作成方法、保管方法、費用、検認の要否、実務上の使いやすさが異なります。

遺言書を作成する場合には、それぞれの特徴を理解したうえで、自分の状況に合った方法を選ぶことが大切です。

この記事では、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の違いを分かりやすく解説します。


1. 遺言書の主な種類

民法では、普通方式の遺言として、自筆証書、公正証書、秘密証書の方式が定められています。

それぞれの大まかな特徴は次のとおりです。

種類作成方法主な特徴
自筆証書遺言遺言者が自分で作成する手軽だが、形式不備や紛失のリスクがある
公正証書遺言公証人が作成する安全性が高く、検認不要
秘密証書遺言内容を秘密にしたまま公証役場で存在を証明する内容を秘密にできるが、実務では利用が少ない

どの方式にもメリットと注意点があります。


2. 自筆証書遺言の特徴

自筆証書遺言は、遺言者が自分で作成する遺言書です。

費用を抑えて作成しやすい一方で、形式の不備、内容の不明確さ、紛失、改ざん、発見されないリスクがあります。

自筆証書遺言では、原則として遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印する必要があります。ただし、財産目録については、自書によらない方法で作成できる場合があります。民法では、自筆証書遺言の方式について、全文、日付、氏名の自書と押印を定め、財産目録については各ページへの署名押印を条件に自書でないものを添付できるとしています。

自宅などで保管されていた自筆証書遺言は、家庭裁判所の検認が必要になる場合があります。

一方、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合には、検認が不要になります。


3. 公正証書遺言の特徴

公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。

公証人が関与するため、形式不備のリスクが低く、原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんのリスクも抑えられます。

公正証書遺言は、家庭裁判所の検認が不要です。

日本公証人連合会は、公正証書遺言の必要資料として、遺言者と相続人との続柄が分かる戸籍謄本、受遺者の住所が分かる資料、不動産がある場合の固定資産税納税通知書または固定資産評価証明書、不動産の登記事項証明書などを案内しています。

公正証書遺言は、費用と準備の手間はかかりますが、安全性や実務上の使いやすさを重視する場合に適しています。


4. 秘密証書遺言の特徴

秘密証書遺言は、遺言の内容を秘密にしたまま、遺言書の存在を公証役場で証明してもらう方式です。

遺言者が作成した遺言書を封じ、公証人と証人の前で一定の手続きを行います。

内容を秘密にできる点が特徴ですが、公証人が内容の正確性まで確認するわけではないため、記載内容に不備があると、相続開始後に問題になることがあります。

また、実務上は、自筆証書遺言や公正証書遺言に比べて利用される機会は多くありません。

秘密証書遺言も、相続開始後には家庭裁判所の検認が必要になります。


5. 検認の要否の違い

遺言書の種類によって、家庭裁判所の検認が必要かどうかが異なります。

種類検認の要否
自宅保管の自筆証書遺言原則として検認が必要
法務局保管の自筆証書遺言検認不要
公正証書遺言検認不要
秘密証書遺言検認が必要

裁判所は、公正証書遺言と、法務局で保管されている自筆証書遺言に関して交付される遺言書情報証明書については、検認の必要がないと案内しています。

検認が必要な遺言書を見つけた場合には、勝手に開封せず、家庭裁判所での手続きを確認することが大切です。


6. どの遺言書を選ぶべきか

遺言書の方式を選ぶ際には、次の観点から考えると分かりやすくなります。

手軽さを重視する場合

自筆証書遺言は、費用を抑えて作成しやすい方法です。

ただし、形式不備や紛失のリスクがあるため、作成方法には十分な注意が必要です。

法務局の保管制度を利用することで、紛失や検認の負担を減らすことができます。

確実性を重視する場合

公正証書遺言は、公証人が関与し、原本が公証役場に保管されるため、安全性が高い方式です。

相続人間のトラブルを避けたい場合、不動産がある場合、子どものいない夫婦、再婚家庭、おひとりさまの相続対策などでは、公正証書遺言を検討する価値があります。

内容を秘密にしたい場合

秘密証書遺言は、内容を秘密にしたまま存在を証明できる方式です。

ただし、実務上の利用頻度や手続きのしやすさを考えると、慎重に検討する必要があります。


7. 行政書士に相談できること

行政書士は、遺言書作成に向けた財産整理、相続人関係の確認、遺言書文案の整理、公正証書遺言作成の準備支援などを行うことができます。

特に、公正証書遺言を作成する場合には、戸籍、財産資料、不動産資料、受遺者の情報などを整理しておく必要があります。

ただし、遺言内容に紛争性がある場合や、遺留分をめぐる複雑な判断が必要な場合には、弁護士への相談が必要になることがあります。


まとめ|遺言書は種類ごとの違いを理解して選びましょう

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言には、それぞれ特徴があります。

ポイントは次のとおりです。

  1. 自筆証書遺言は手軽だが、形式不備や紛失に注意する
  2. 公正証書遺言は安全性が高く、検認が不要である
  3. 秘密証書遺言は内容を秘密にできるが、実務では利用が少ない
  4. 法務局保管制度を利用した自筆証書遺言は検認不要である
  5. 家族構成や財産内容に応じて方式を選ぶことが大切である

遺言書は、残された家族が迷わず相続手続きを進めるための大切な書類です。

作成する際には、方式ごとの違いを理解し、確実に使える内容にしておくことが重要です。


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