11-3. 自筆証書遺言を作る場合の注意点

自筆証書遺言は、自分で作成できる遺言書です。

公証役場に行かなくても作成できるため、比較的手軽な方法といえます。

一方で、自筆証書遺言は形式不備、内容のあいまいさ、保管方法、発見されないリスクなどに注意が必要です。

この記事では、自筆証書遺言を作る場合に確認しておきたい基本的な注意点について解説します。


1. 自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、遺言者が自分で作成する遺言書です。

民法では、自筆証書遺言について、遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印することを定めています。また、財産目録については、自書によらない方法で作成できる場合がありますが、その場合でも各ページに署名押印が必要です。
(出典:「民法」e-Gov法令検索

自筆証書遺言は、費用を抑えて作成しやすい反面、方式を誤ると相続開始後に使えない遺言書になってしまう可能性があります。


2. 日付・氏名・押印に注意する

自筆証書遺言では、日付、氏名、押印が重要です。

特に日付は、年月日が特定できるように記載する必要があります。

「令和○年○月吉日」のように日付が特定できない書き方は避けるべきです。

また、氏名は本人が自書し、押印も必要です。

形式面に不備があると、遺言書の有効性をめぐって相続人間で争いになる可能性があります。


3. 財産を特定できるように書く

遺言書では、誰にどの財産を渡すのかを明確に書く必要があります。

たとえば、不動産について「自宅を長男に相続させる」とだけ書くと、どの不動産を指しているのか分かりにくい場合があります。

不動産については、登記事項証明書を確認し、所在、地番、家屋番号などを正確に記載することが望ましいです。

預貯金についても、金融機関名、支店名、口座種別、口座番号などを記載しておくと、相続開始後の手続きが進めやすくなります。


4. 財産目録を活用する

自筆証書遺言では、財産目録を本文とは別に添付する方法があります。

財産目録は、パソコンで作成したものや、通帳のコピー、不動産登記事項証明書の写しなどを利用できる場合があります。

ただし、自書によらない財産目録を添付する場合には、各ページに署名押印が必要です。
(出典:「民法」e-Gov法令検索

財産目録を活用すると、財産を整理しやすくなります。

一方で、本文との対応関係が分かりにくいと、相続開始後に混乱が生じることがあります。

「別紙財産目録1の不動産を妻に相続させる」など、本文と財産目録が対応するように記載しましょう。


5. 保管方法に注意する

自筆証書遺言を自宅で保管する場合、次のようなリスクがあります。

  • 遺言書が発見されない
  • 紛失する
  • 誤って処分される
  • 改ざんを疑われる
  • 相続人の一部が隠したと疑われる
  • 家庭裁判所の検認が必要になる

裁判所は、遺言書の保管者または発見した相続人は、遺言者の死亡を知った後、遅滞なく家庭裁判所に遺言書を提出して検認を請求しなければならないと案内しています。
(出典:「遺言書の検認」裁判所

検認は、遺言書の偽造・変造を防止するための手続きであり、遺言の有効・無効を判断する手続きではありません。
(出典:「遺言書の検認」裁判所

自宅保管に不安がある場合には、法務局の自筆証書遺言書保管制度を検討するとよいでしょう。


6. 遺留分にも配慮する

遺言書では、自分の意思を反映させることができます。

しかし、一定の相続人には遺留分が認められています。

たとえば、特定の相続人にすべての財産を取得させる内容にすると、他の相続人から遺留分侵害額請求がされる可能性があります。

遺留分をめぐる争いが予想される場合には、弁護士に相談しながら内容を検討することが大切です。


7. 行政書士に相談できること

行政書士は、自筆証書遺言の作成に向けて、相続人関係の確認、財産目録の作成、遺言書文案の整理、法務局保管制度の利用準備などをサポートできます。

遺言書は、形式を満たすだけでなく、相続開始後に金融機関や不動産の手続きで使いやすい内容にしておくことが大切です。

財産内容が複雑な場合や、相続人間で争いが予想される場合には、公正証書遺言や弁護士への相談も検討しましょう。


まとめ|自筆証書遺言は手軽ですが形式と内容に注意が必要です

自筆証書遺言は、自分で作成できる遺言書です。

重要なポイントは次のとおりです。

  1. 本文、日付、氏名を自書し、押印する
  2. 日付は特定できる形で書く
  3. 財産を具体的に特定する
  4. 財産目録を使う場合は各ページに署名押印する
  5. 自宅保管では紛失や検認の負担に注意する
  6. 遺留分への配慮も必要である

自筆証書遺言を作成する場合には、手軽さだけでなく、相続開始後に実際に使える内容になっているかを確認しましょう。


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