1-2. 亡くなった方の預金を引き出してよいのか|葬儀費用と相続財産の注意点
ご家族が亡くなられた後、葬儀費用、入院費、施設費、公共料金など、すぐに支払いが必要になることがあります。
そのようなときに、
「亡くなった親の預金を引き出して支払ってよいのか」
「銀行に死亡を伝えると口座が凍結されるのか」
「葬儀費用なら引き出しても問題ないのか」
「他の相続人に黙って使うとトラブルになるのか」
と迷われる方は少なくありません。
亡くなられた方の預金は、相続財産の一部です。必要な支払いであっても、扱い方を間違えると相続人間のトラブルにつながることがあります。
この記事では、亡くなられた方の預金を引き出す場合の注意点と、葬儀費用などを支払う際に確認しておきたいポイントを解説します。
1. 亡くなられた方の預金は相続財産です
亡くなられた方の銀行口座にある預金は、相続財産に含まれます。
そのため、相続人の一人が当然に自由に使えるものではありません。
たとえば、亡くなられた方のキャッシュカードを使ってATMから預金を引き出した場合、後から他の相続人から次のように言われることがあります。
- 何のために引き出したのか
- いくら引き出したのか
- 残金はどこにあるのか
- 自分のために使ったのではないか
- 相続財産を勝手に処分したのではないか
実際には葬儀費用や病院費用の支払いに使ったとしても、記録が残っていなければ説明が難しくなることがあります。
相続人が複数いる場合には、亡くなられた方の預金を扱う際には慎重な対応が必要です。
2. 銀行が死亡を知ると口座は凍結されます
金融機関が口座名義人の死亡を知ると、通常、その口座からの入出金はできなくなります。
これは、相続人の一部が勝手に預金を引き出すことを防ぎ、相続手続きが整ってから払い戻すためです。
口座が凍結されると、通常のキャッシュカードや通帳による引出し、振替、口座振替などは止まります。公共料金やクレジットカードの引落しができなくなることもあります。
そのため、亡くなられた方の口座を確認するときは、次の点を整理しておくとよいでしょう。
- どの金融機関に口座があるか
- 普通預金、定期預金、外貨預金などの種類
- 口座残高
- 公共料金などの引落し口座になっているか
- 年金や家賃収入などの入金口座になっていたか
- 借入金やローンの返済口座になっていないか
口座が凍結された後は、金融機関所定の相続手続きに従って、解約や払戻しを進めることになります。
3. 葬儀費用の支払いでも記録が重要です
葬儀費用は、亡くなられた後すぐに支払いが必要になることが多い費用です。
そのため、代表の相続人が立て替えたり、亡くなられた方の預金から支払ったりすることがあります。
ただし、葬儀費用であっても、相続人間で認識が異なることがあります。
たとえば、次のような点が問題になることがあります。
- 葬儀の規模や費用が妥当だったか
- 香典を誰が管理したか
- 香典を葬儀費用に充てたか
- 亡くなられた方の預金からいくら使ったか
- 残額を誰が管理しているか
- 墓地、仏壇、法要費用をどう扱うか
葬儀費用を支払った場合には、領収書、請求書、香典帳、支払明細などを保管しておきましょう。
後から相続人間で精算する可能性があるため、「支払った事実」と「支払いの内容」が分かるようにしておくことが大切です。
4. 必要な支払いは、できれば立替えや相続人間の確認をして進める
亡くなられた方の預金を使う前に、可能であれば相続人間で確認しておくことをおすすめします。
たとえば、次のような形です。
- 葬儀費用は誰が一時的に立て替えるか
- 立て替えた費用を後日相続財産から精算するか
- 香典をどのように管理するか
- 病院費用や施設費用を誰が支払うか
- 亡くなられた方の口座から引き出す必要があるか
相続人同士の関係が良好な場合でも、お金の扱いは後から誤解が生じやすい部分です。
電話だけで済ませるのではなく、メールやメッセージなど、簡単でも記録に残る形で確認しておくと安心です。
5. 預金の払戻しには金融機関での相続手続きが必要です
口座凍結後に預金を正式に払い戻すには、金融機関所定の相続手続きが必要です。
一般的には、次のような書類を求められます。
- 亡くなられた方の戸籍
- 相続人の戸籍
- 相続人の印鑑証明書
- 遺言書がある場合は遺言書
- 遺産分割協議書
- 金融機関所定の相続届
- 通帳、キャッシュカード
必要書類は金融機関によって異なります。
相続人が1人の場合、相続人が複数いる場合、遺言書がある場合、遺産分割協議書がある場合などによって、提出書類も変わります。
そのため、まずは金融機関に連絡し、必要書類を確認することが重要です。
6. 相続放棄を検討している場合は特に注意が必要です
亡くなられた方に借金がある可能性がある場合、相続放棄を検討することがあります。
相続放棄は、原則として自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。
相続放棄を検討している場合には、亡くなられた方の預金を使ったり、財産を処分したりする前に、慎重に判断する必要があります。
財産を処分したと評価される行為があると、相続放棄に影響する可能性があります。
借金があるかどうか分からない場合や、相続放棄を検討する可能性がある場合には、早めに専門家へ相談することをおすすめします。
まとめ|預金を扱うときは、記録と相続人間の確認が大切です
亡くなられた方の預金は、相続財産に含まれます。
葬儀費用、病院費用、施設費用など、必要な支払いがある場合でも、相続人の一人が自由に使ってよいわけではありません。
特に注意したいのは、次の点です。
- 預金は相続財産である
- 金融機関が死亡を知ると口座は凍結される
- 引き出しや支払いの記録を残す
- 葬儀費用や香典の管理を明確にする
- 相続人間で確認しながら進める
- 相続放棄を検討している場合は慎重に対応する
預金の扱いは、相続手続きの中でもトラブルになりやすい部分です。
少しでも迷う場合は、早い段階で状況を整理し、必要書類や手続きの進め方を確認することが大切です。
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