11-1. 生前対策としての遺言書作成|家族に負担を残さないために
相続は、亡くなった後に始まる手続きです。
しかし、相続で家族が困らないようにするための準備は、生前から行うことができます。
その代表的な方法が、遺言書の作成です。
遺言書を作成しておくことで、誰にどの財産を引き継いでもらうのかを明確にし、残された家族が相続手続きを進めやすくなります。
この記事では、生前対策として遺言書を作成する意味、遺言書を検討した方がよいケース、行政書士に相談できる内容について解説します。
1. 遺言書は家族への道しるべになります
遺言書は、自分の財産を誰にどのように引き継いでもらうかを示す書類です。
遺言書がない場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、財産の分け方を決める必要があります。
相続人同士の関係が良好であれば話し合いで進められることもありますが、財産の内容や家族関係によっては、協議に時間がかかることがあります。
遺言書があると、相続手続きの方針が明確になり、残された家族が迷いにくくなります。
特に、不動産がある場合、相続人が複数いる場合、子どものいない夫婦、再婚家庭、おひとりさまの場合には、遺言書を作成する意味が大きくなります。
2. 遺言書を作成した方がよいケース
次のような場合には、生前に遺言書を作成することを検討するとよいでしょう。
- 子どものいない夫婦である
- おひとりさまである
- 再婚家庭である
- 前婚の子がいる
- 相続人以外の人に財産を渡したい
- 自宅不動産を配偶者に残したい
- 事業用財産を特定の人に承継させたい
- 相続人同士の関係に不安がある
- 財産の大部分が不動産である
- 兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる可能性がある
遺言書がない場合、法律上の相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。
相続人が多い場合や、関係が疎遠な相続人がいる場合には、遺言書が相続手続きの負担軽減につながります。
3. 遺言書の種類
遺言書には、主に次の3種類があります。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
民法では、普通方式の遺言として、自筆証書、公正証書、秘密証書の方式が定められています。自筆証書遺言は本人が自書して作成する方法、公正証書遺言は公証人が関与して作成する方法です。
実務上は、自筆証書遺言または公正証書遺言が検討されることが多くあります。
自筆証書遺言は比較的手軽に作成できますが、形式不備や保管方法に注意が必要です。
公正証書遺言は、公証人が関与し、原本が公証役場に保管されるため、安全性を重視する場合に向いています。
4. 遺言書があればすべて安心というわけではありません
遺言書は有効な生前対策ですが、内容が不十分だと、相続開始後に問題が生じることがあります。
たとえば、次のようなケースです。
- 財産の表示があいまいで特定できない
- 遺言書に記載されていない財産がある
- 遺留分への配慮が不足している
- 遺言執行者が指定されていない
- 不動産の記載が登記簿と一致していない
- 作成後に財産内容が変わっている
- 相続人の一部に過度に偏った内容になっている
遺言書は、形式だけでなく、相続開始後に実際に使える内容になっていることが重要です。
そのため、財産目録を作成し、相続人関係を確認したうえで作成することをおすすめします。
5. 財産整理もあわせて行う
遺言書を作成する際には、財産整理もあわせて行いましょう。
確認しておきたい財産は次のとおりです。
- 預貯金
- 不動産
- 株式・投資信託
- 生命保険
- 自動車
- 貴金属
- 借入金
- ローン
- 未払金
- 事業用財産
財産を一覧にした財産目録を作成しておくと、遺言書の内容を検討しやすくなります。
また、残された家族が財産を探す負担も軽くなります。
6. 行政書士に相談できること
行政書士は、生前対策としての遺言書作成について、相続人調査、財産目録の作成、遺言書文案の整理、公正証書遺言作成の準備支援などをサポートできます。
また、必要に応じて、公証役場、司法書士、税理士、弁護士などと連携しながら進めることがあります。
ただし、相続人間で争いが予想される場合や、遺留分に関する高度な法的判断が必要な場合には、弁護士への相談が必要になることがあります。
まとめ|遺言書は家族の負担を減らすための生前対策です
遺言書は、残された家族が相続手続きを進めるための重要な道しるべになります。
重要なポイントは次のとおりです。
- 遺言書があると財産の承継方針が明確になる
- 遺言書がない場合は遺産分割協議が必要になる
- 子どものいない夫婦、再婚家庭、おひとりさまでは特に重要である
- 財産を特定できるように記載する必要がある
- 財産目録の作成もあわせて行う
- 公正証書遺言や法務局保管制度の利用も検討する
相続対策は、財産の多い方だけのものではありません。
家族に負担を残さないためにも、早めに財産と相続人関係を整理し、遺言書作成を検討しましょう。
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