9-3. 行政書士に依頼できる相続手続きと依頼できない業務
相続手続きでは、行政書士に相談できることと、行政書士では対応できないことがあります。
行政書士は、相続人調査、戸籍収集、財産目録、遺産分割協議書、預貯金や自動車の手続きなど、相続実務に必要な書類作成や手続き整理をサポートできます。
一方で、不動産登記、相続税申告、相続人間の争いへの代理交渉などは、他の専門家の業務です。
この記事では、行政書士に依頼できる相続手続きと、依頼できない業務について整理します。
1. 行政書士ができる相続手続き
行政書士は、行政書士法に基づく国家資格者であり、官公署に提出する書類、権利義務に関する書類、事実証明に関する書類の作成などを行う専門職です。日本行政書士会連合会も、行政書士が遺言書等の権利義務、事実証明、契約書の作成などを行うと説明しています。
(出典:「行政書士とは」日本行政書士会連合会)
相続手続きでは、主に次のような業務を依頼できます。
- 相続人調査
- 戸籍収集
- 相続関係説明図の作成
- 法定相続情報一覧図の作成支援
- 財産目録の作成
- 遺産分割協議書の作成
- 預貯金の相続手続き支援
- 自動車の相続・名義変更・廃車手続き
- 公正証書遺言作成の準備支援
- 他士業との連携に必要な資料整理
2. 戸籍収集・相続人調査
相続手続きでは、まず誰が相続人になるのかを確認する必要があります。
行政書士は、戸籍収集や相続人調査をサポートできます。
特に、次のような場合には、戸籍収集が複雑になります。
- 前婚の子がいる
- 養子がいる
- 認知した子がいる
- 兄弟姉妹が相続人になる
- 甥・姪が相続人になる
- 本籍地が複数の自治体にまたがっている
戸籍を正確に読み取り、相続関係を整理することは、遺産分割協議書や預貯金手続き、不動産登記の前提になります。
3. 財産目録・遺産分割協議書の作成
行政書士は、財産目録や遺産分割協議書の作成をサポートできます。
財産目録には、預貯金、不動産、株式、自動車、借金、未払金などを整理します。
遺産分割協議書には、相続人全員で合意した財産の分け方を記載します。
日本行政書士会連合会は、「権利義務に関する書類」の例として、遺産分割協議書を挙げています。
(出典:「行政書士の業務」日本行政書士会連合会)
遺産分割協議書は、預貯金の払戻し、不動産の相続登記、自動車の名義変更、証券会社の手続きなどで利用されます。
ただし、相続人同士で争いがある場合、行政書士が一方の代理人として交渉することはできません。
4. 預貯金・自動車の相続手続き
行政書士は、預貯金の相続手続きに必要な書類整理や、自動車の名義変更・廃車手続きなどをサポートできます。
相続では、戸籍、遺産分割協議書、委任状、金融機関所定の相続届など、多くの書類が必要になることがあります。
自動車の名義変更や廃車についても、必要書類や手続先を確認しながら進める必要があります。
※自動車登録業務については、各行政書士会・行政書士事務所の取扱業務により対応範囲が異なるため、具体的な対応可否は依頼先に確認する必要があります。
5. 行政書士に依頼できない業務
行政書士には依頼できない業務もあります。
主なものは次のとおりです。
不動産の相続登記申請
相続登記の申請代理や登記申請書の作成は司法書士の業務です。
法務省は、司法書士の業務として、登記または供託に関する手続について代理することを挙げています。
(出典:「司法書士の業務」法務省)
相続税申告
相続税申告書の作成、税額計算、税務代理、税務相談は税理士の業務です。
税理士は、税務代理、税務書類の作成、税務相談を行う専門家です。
(出典:「税理士とは」日本税理士会連合会)
相続人間の争いへの代理交渉
相続人同士で争いがある場合、交渉代理や調停・訴訟対応は弁護士の業務です。
遺産分割協議がまとまらない場合には、家庭裁判所の遺産分割調停や審判を利用することがあります。
(出典:「遺産分割調停」裁判所)
6. 行政書士に相談しやすいケース
行政書士に相談しやすいのは、次のようなケースです。
- 相続人同士で争いはない
- 戸籍収集を任せたい
- 財産目録を作りたい
- 遺産分割協議書を作成したい
- 預貯金の相続手続きを整理したい
- 自動車の名義変更や廃車をしたい
- 不動産登記や相続税について他士業と連携してほしい
- 相続手続き全体を整理したい
行政書士は、相続手続きの入口で状況を整理し、必要に応じて司法書士、税理士、弁護士へつなぐ役割を担うことができます。
まとめ|行政書士は相続手続きの書類整理を幅広く支援できます
行政書士は、相続手続きに必要な書類作成や手続き整理をサポートできます。
一方で、他士業の専門業務にあたるものは対応できません。
重要なポイントは次のとおりです。
- 行政書士は戸籍収集、相続人調査、財産目録、遺産分割協議書作成を支援できる
- 預貯金や自動車の相続手続きも相談しやすい
- 不動産登記は司法書士の業務である
- 相続税申告は税理士の業務である
- 相続人間の争いは弁護士に相談する
- 行政書士は相続手続き全体の整理役として活用できる
相続手続きでは、行政書士に依頼できる範囲を理解し、必要に応じて他の専門家と連携しながら進めることが大切です。
関連記事
- 相続で揉めそうな場合は誰に相談すべきか|弁護士・司法書士・行政書士の違い
- 相続登記は誰に依頼するべきか|行政書士と司法書士の役割分担
- 相続手続きで税理士に相談すべきケース
- 相続手続きを専門家に依頼するメリットと費用の考え方
出典・参考情報
- 「行政書士とは」日本行政書士会連合会
行政書士の位置づけ、官公署提出書類、権利義務・事実証明に関する書類作成などについて案内されています。 - 「行政書士の業務」日本行政書士会連合会
行政書士が作成できる書類、遺産分割協議書などの権利義務に関する書類、他の法律で制限される業務について案内されています。 - 「司法書士の業務」法務省
司法書士の業務として、登記または供託に関する手続の代理などが案内されています。 - 「税理士とは」日本税理士会連合会
税理士の業務として、税務代理、税務書類の作成、税務相談などが案内されています。 - 「遺産分割調停」裁判所
遺産分割について話合いがつかない場合の調停・審判手続について案内されています。
