3-1. 相続人調査とは?戸籍収集の方法と注意点
相続手続きを進めるうえで、最初に確認すべき重要な作業の一つが、相続人調査です。
相続人調査とは、亡くなられた方の戸籍を集め、法律上の相続人が誰であるかを確認する手続きです。
ご家族の間では「相続人は分かっている」と思っていても、銀行、不動産、証券会社、自動車の名義変更などの手続きでは、戸籍による確認が必要になります。
この記事では、相続人調査の意味、戸籍収集の基本的な流れ、注意すべきケースについて解説します。
1. 相続人調査とは
相続人調査とは、亡くなられた方の戸籍を確認し、法律上の相続人を確定する作業です。
相続では、配偶者、子、親、兄弟姉妹など、民法で定められた人が相続人になります。民法では、被相続人の子は相続人となり、被相続人の配偶者は常に相続人になると定められています。また、子がいない場合には直系尊属、直系尊属もいない場合には兄弟姉妹が相続人となる場合があります。
相続人調査では、単に現在の戸籍を見るだけではなく、亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍をたどり、子ども、養子、認知した子、前婚の子などがいないかを確認します。
この確認をしないまま手続きを進めると、後から別の相続人が判明し、遺産分割協議書の作り直しや金融機関での手続きのやり直しが必要になることがあります。
2. なぜ戸籍で確認する必要があるのか
相続人は、家族の話し合いや記憶だけで決めるものではありません。
相続手続きでは、誰が法律上の相続人であるかを、戸籍によって証明する必要があります。
たとえば、次のような事実は、戸籍を確認しなければ正確に分からないことがあります。
- 前婚の子がいる
- 認知した子がいる
- 養子縁組をしている
- 子が先に亡くなっており、孫が相続人になる
- 兄弟姉妹が相続人になる
- 兄弟姉妹が先に亡くなっており、甥・姪が相続人になる
- 戸籍の転籍や改製により、複数の戸籍を確認する必要がある
相続登記について法務省は、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸除籍謄本などを収集して、法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定する必要があると説明しています。
3. 相続人調査で集める主な戸籍
相続人調査で一般的に必要になる戸籍は、次のようなものです。
- 亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍
- 亡くなられた方の除籍謄本
- 改製原戸籍
- 相続人の現在戸籍
- 亡くなられた方の住民票の除票または戸籍の附票
- 相続人の住民票
- 子や兄弟姉妹が先に亡くなっている場合、その方の出生から死亡までの戸籍
必要な戸籍は、相続関係によって変わります。
配偶者と子が相続人になる比較的単純なケースと、兄弟姉妹や甥・姪が相続人になるケースでは、集める戸籍の量が大きく異なります。
4. 戸籍収集の基本的な流れ
戸籍収集は、一般的に次の流れで進めます。
まず、亡くなられた方の最後の本籍地で死亡の記載がある戸籍を取得します。
次に、その戸籍から一つ前の戸籍をたどります。転籍、婚姻、戸籍の改製などがある場合には、さらに前の戸籍を取得します。
この作業を繰り返し、亡くなられた方の出生までさかのぼります。
そのうえで、戸籍に記載された子、養子、認知した子などを確認し、必要に応じて相続人の現在戸籍も取得します。
戸籍は、本籍地の市区町村で取得するのが基本ですが、令和6年3月1日からは、本籍地以外の市区町村の窓口でも戸籍証明書や除籍証明書を請求できる広域交付制度が始まっています。
ただし、広域交付には利用できる人や証明書の種類に制限があります。横浜市も、広域交付は郵送やオンライン申請では請求できず、一部の戸籍・除籍や戸籍の附票などは対象外であると案内しています。
5. 相続人調査で注意すべきケース
相続人調査では、次のようなケースで特に注意が必要です。
前婚の子がいる場合
亡くなられた方に前婚の子がいる場合、その子も相続人になる可能性があります。
現在の家族が前婚の子の存在を知らなかった場合でも、戸籍上確認できれば、相続人として手続きに関与する必要があります。
養子がいる場合
養子も、原則として法律上の子として相続人になります。
戸籍を確認しないと、養子縁組の有無を見落とすことがあります。
認知した子がいる場合
婚姻関係にない相手との間の子であっても、認知されていれば相続人になる可能性があります。
認知の記載は戸籍に表れるため、出生から死亡までの戸籍確認が重要です。
兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合
亡くなられた方に子がなく、親などの直系尊属も亡くなっている場合には、兄弟姉妹が相続人になることがあります。
兄弟姉妹が先に亡くなっている場合には、その子である甥・姪が相続人になることがあります。
この場合は、亡くなられた方だけでなく、父母や兄弟姉妹の戸籍まで確認する必要があり、戸籍収集が複雑になります。
6. 相続人調査を誤るとどうなるか
相続人調査を誤ると、相続手続き全体に影響します。
たとえば、次のような問題が起こることがあります。
- 遺産分割協議書が無効になる
- 金融機関で預貯金の払戻しができない
- 不動産の相続登記が進まない
- 自動車や株式の名義変更ができない
- 後から相続人が現れて協議のやり直しになる
- 相続人間のトラブルにつながる
相続人全員の合意が必要な手続きでは、一人でも相続人が漏れていると、手続きを進めることができません。
そのため、相続人調査は、相続手続きの最初に丁寧に行う必要があります。
7. 行政書士に相談できること
行政書士は、相続手続きに必要な戸籍収集、相続関係説明図の作成、財産目録の作成、遺産分割協議書の作成などをサポートできます。
戸籍の読み取りや相続関係の整理は、慣れていない方にとって分かりにくい部分です。
特に、本籍地が複数の市区町村にまたがる場合、古い戸籍が必要な場合、兄弟姉妹や甥・姪が関係する場合には、専門家に相談することで手続きを整理しやすくなります。
まとめ|相続人調査は相続手続きの出発点です
相続人調査は、相続手続きを正確に進めるための出発点です。
相続人調査で重要なポイントは、次のとおりです。
- 相続人は戸籍で確認する
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍を集める
- 前婚の子、養子、認知した子を見落とさない
- 兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合は戸籍収集が複雑になる
- 相続人が一人でも漏れると手続きに影響する
相続手続きを始める際は、まず戸籍を集め、相続人を正確に確認することが大切です。
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