5-2. 遺言書がある場合の相続手続きの進め方

相続手続きでは、遺言書の有無によって進め方が大きく変わります。

遺言書がある場合には、原則としてその内容に沿って財産を引き継ぐことになります。

ただし、遺言書があるからといって、すぐに預貯金の払戻しや不動産の名義変更ができるとは限りません。

遺言書の種類、検認の要否、遺言執行者の有無、記載されている財産の範囲などを確認しながら進める必要があります。

この記事では、遺言書がある場合の相続手続きの基本的な流れと注意点について解説します。


1. まず遺言書の種類を確認する

遺言書がある場合、最初に確認すべきことは、その遺言書の種類です。

主な遺言書には、次の3種類があります。

  • 自筆証書遺言
  • 公正証書遺言
  • 秘密証書遺言

民法では、普通方式の遺言として、自筆証書、公正証書、秘密証書の方式が定められています。

自筆証書遺言の場合は、自宅などで保管されていたものか、法務局で保管されていたものかによって、家庭裁判所の検認が必要かどうかが変わります。

公正証書遺言の場合は、家庭裁判所の検認は不要です。


2. 検認が必要な遺言書か確認する

自宅などで保管されていた自筆証書遺言や秘密証書遺言が見つかった場合には、家庭裁判所での検認が必要になることがあります。

検認は、相続人に遺言書の存在と内容を知らせ、遺言書の状態を確認して偽造や変造を防止するための手続きです。

裁判所は、検認は遺言の有効・無効を判断する手続きではないと説明しています。

そのため、検認を受けた後でも、遺言書の内容や効力をめぐって争いが生じることはあります。

公正証書遺言や、法務局で保管された自筆証書遺言に関する遺言書情報証明書については、検認は不要です。


3. 遺言執行者の有無を確認する

遺言書に遺言執行者が指定されている場合、その人が遺言内容を実現するための手続きを進めます。

遺言執行者は、遺言書の内容に従って、預貯金の解約や名義変更、財産の引渡しなどを行う役割を担います。

遺言執行者が指定されている場合には、金融機関や関係者に対して、遺言執行者として手続きを行うことを示す必要があります。

遺言執行者が指定されていない場合には、相続人が協力して手続きを進めることになりますが、遺言の内容によっては、家庭裁判所で遺言執行者の選任を検討することもあります。


4. 遺言書の内容と財産を照合する

遺言書がある場合でも、実際の財産状況と照らし合わせる必要があります。

確認すべきポイントは次のとおりです。

  • 遺言書に記載された預貯金口座が現在も存在するか
  • 不動産の表示が登記簿と一致しているか
  • 株式や投資信託が現在も残っているか
  • 遺言書作成後に取得した財産があるか
  • 遺言書に記載されていない財産があるか
  • 財産を受け取る人が現在も生存しているか

遺言書に記載されていない財産がある場合、その財産については相続人間で遺産分割協議が必要になることがあります。

そのため、遺言書がある場合でも、相続人調査や財産調査は重要です。


5. 財産ごとの相続手続きを進める

遺言書の内容を確認したら、財産ごとの手続きを進めます。

主な手続き先は次のとおりです。

  • 預貯金:金融機関
  • 不動産:法務局
  • 株式・投資信託:証券会社
  • 自動車:運輸支局、軽自動車検査協会
  • 生命保険:保険会社

必要書類は、遺言書の種類や手続き先によって異なります。

一般的には、遺言書、戸籍、相続人または受遺者の本人確認書類、印鑑証明書、金融機関所定の書類などが求められます。

不動産の相続登記申請は司法書士の業務です。

行政書士は、戸籍収集、財産目録、相続関係説明図、遺産分割協議書の作成など、相続手続きの前提となる書類整理をサポートします。


6. 遺留分に注意する

遺言書がある場合でも、一定の相続人には遺留分が問題になることがあります。

遺留分とは、一定の相続人に法律上保障された最低限の取り分です。

たとえば、特定の相続人にすべての財産を相続させる遺言がある場合でも、他の相続人から遺留分侵害額請求がされる可能性があります。

遺留分をめぐって相続人間で争いが生じる場合には、弁護士に相談する必要があります。

行政書士は、争いのない相続手続きにおける書類作成や手続き整理を支援します。


7. 相続税の確認も必要です

遺言書がある場合でも、相続税の確認は必要です。

相続税がかかるかどうかは、遺言書の有無ではなく、相続財産の総額や法定相続人の数などによって判断します。

相続税の申告期限は、原則として被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内です。国税庁も、相続税の申告は通常、死亡の日の翌日から10か月以内に行うと案内しています。

相続税がかかる可能性がある場合には、早めに税理士へ相談することが大切です。


まとめ|遺言書がある場合も、確認すべき手続きがあります

遺言書がある場合には、原則としてその内容に沿って相続手続きを進めます。

ただし、次の点を確認する必要があります。

  1. 遺言書の種類を確認する
  2. 家庭裁判所の検認が必要か確認する
  3. 遺言執行者が指定されているか確認する
  4. 遺言書の内容と実際の財産を照合する
  5. 記載されていない財産がないか確認する
  6. 財産ごとの相続手続きを進める
  7. 遺留分や相続税にも注意する

遺言書がある場合でも、相続手続きは自動的に完了するわけではありません。

遺言書の内容を確認し、必要な書類を整理しながら、財産ごとの手続きを進めることが大切です。


関連記事

  • 遺言書が見つかった場合に最初に確認すべきこと
  • 遺言書がない場合の相続手続きと遺産分割協議
  • 自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の違い
  • 公正証書遺言を作る流れ|必要書類・費用・期間の目安

\ 最新情報をチェック /