3-2. 被相続人の出生から死亡までの戸籍とは|なぜ必要になるのか
相続手続きでは、亡くなられた方の「出生から死亡までの戸籍」が必要になることがあります。
銀行や法務局、証券会社などで相続手続きを進める際に、単に死亡の記載がある戸籍だけでは足りないことがあります。
では、なぜ亡くなられた方の出生から死亡までの戸籍が必要なのでしょうか。
この記事では、出生から死亡までの戸籍の意味、必要になる理由、取得する際の注意点について解説します。
1. 出生から死亡までの戸籍とは
「出生から死亡までの戸籍」とは、亡くなられた方が生まれてから亡くなるまでの身分関係を確認できる一連の戸籍のことです。
一つの戸籍だけで完結するとは限りません。
人は、婚姻、転籍、戸籍制度の改製、養子縁組などによって、複数の戸籍に記録が分かれていることがあります。
そのため、相続手続きでは、次のような戸籍を順番に集めることがあります。
- 現在戸籍
- 除籍謄本
- 改製原戸籍
- 転籍前の戸籍
- 婚姻前の戸籍
- 養子縁組前後の戸籍
これらをつなげて確認することで、亡くなられた方の親族関係を正確に把握します。
2. なぜ出生までさかのぼる必要があるのか
相続手続きで出生まで戸籍をさかのぼる理由は、法律上の相続人を漏れなく確認するためです。
死亡時の戸籍だけを見ても、すべての子どもが記載されているとは限りません。
たとえば、次のような人は、現在の戸籍だけでは分からないことがあります。
- 結婚して別戸籍になった子
- 前婚の子
- 認知した子
- 養子
- すでに亡くなった子
- 転籍前の戸籍に記載されている子
法務省は、相続登記を申請する場合、被相続人の出生から死亡に至るまでの戸除籍謄本などを収集して、法定相続人の範囲や法定相続分の割合を確定する必要があると説明しています。
つまり、出生から死亡までの戸籍は、「相続人が誰か」を証明するために必要な資料です。
3. 死亡の記載がある戸籍だけでは足りない理由
死亡の記載がある戸籍には、亡くなられた時点の戸籍関係が記載されています。
しかし、その戸籍だけでは、過去の婚姻、離婚、認知、養子縁組、転籍などのすべてを確認できないことがあります。
たとえば、亡くなられた方に前婚の子がいた場合、その子は現在の戸籍に記載されていないことがあります。
また、子が結婚して別の戸籍に移っている場合、死亡時の戸籍だけでは、その子の現在の戸籍や生存を確認できないことがあります。
相続手続きでは、相続人全員を正確に確認する必要があるため、死亡時の戸籍だけでなく、過去の戸籍までたどる必要があります。
4. 戸籍をたどる基本的な方法
戸籍をたどるときは、通常、亡くなられた方の最後の本籍地から始めます。
まず、死亡の記載がある戸籍を取得します。
そこに、前の戸籍の本籍地や筆頭者が記載されていれば、その前の本籍地の市区町村に請求します。
この作業を繰り返し、出生時の戸籍までさかのぼります。
途中で、次のような戸籍が出てくることがあります。
- 婚姻前の戸籍
- 転籍前の戸籍
- 改製原戸籍
- 除籍謄本
- 養子縁組の記載がある戸籍
古い戸籍は手書きで記載されていることもあり、読み取りに慣れていないと分かりにくい場合があります。
5. 広域交付制度を利用できる場合
令和6年3月1日から、戸籍証明書等の広域交付制度が始まり、本籍地以外の市区町村窓口でも、一定の戸籍証明書や除籍証明書を請求できるようになりました。
これにより、本籍地が遠方にある場合でも、最寄りの市区町村窓口で戸籍を取得できる場合があります。
ただし、広域交付には制限があります。
横浜市の案内では、広域交付は郵送やオンライン申請では請求できず、電算化されていない一部の戸籍・除籍や、戸籍の附票などは対象外とされています。
また、兄弟姉妹の相続や甥・姪の相続では、広域交付だけで必要な戸籍がすべてそろわないこともあります。
6. 出生から死亡までの戸籍が必要になる主な手続き
出生から死亡までの戸籍は、次のような手続きで必要になることがあります。
- 預貯金の相続手続き
- 不動産の相続登記
- 株式・投資信託の相続手続き
- 自動車の名義変更
- 法定相続情報一覧図の申出
- 遺産分割協議書の作成
- 相続税申告の前提資料
- 相続人調査
手続き先によって、求められる戸籍の範囲が異なることがあります。
金融機関では、相続人の状況や遺言書の有無によって必要書類が変わる場合があります。
7. 戸籍がそろわない場合の注意点
戸籍を集めている途中で、次のような問題が生じることがあります。
- 本籍地が分からない
- 古い戸籍の文字が読みにくい
- 転籍を何度もしている
- 戸籍が戦災や災害で失われている
- 改製原戸籍が必要になる
- 相続人の一部の現在戸籍が確認できない
- 海外在住の相続人がいる
このような場合には、市区町村役場や専門家に確認しながら進める必要があります。
戸籍収集は時間がかかることもあるため、相続手続きを始める際には早めに着手することをおすすめします。
まとめ|出生から死亡までの戸籍は相続人確認のために必要です
被相続人の出生から死亡までの戸籍は、相続人を正確に確認するために必要です。
ポイントは次のとおりです。
- 死亡時の戸籍だけでは相続人を確認しきれないことがある
- 前婚の子、養子、認知した子などを確認する必要がある
- 婚姻、転籍、改製により複数の戸籍を集めることがある
- 広域交付制度を利用できる場合がある
- 戸籍収集には時間がかかることがある
相続手続きでは、まず戸籍をそろえて相続人を確認することが重要です。
関連記事
- 相続人調査とは?戸籍収集の方法と注意点
- 相続関係説明図とは?作成するメリットと使い道
- 法定相続情報一覧図とは|相続手続きで利用するメリット
- 兄弟姉妹や甥・姪が相続人になる場合の戸籍収集

